智積院は、空海入定(835年(承和2年))から260年ほど後に高野山に建立された「大伝法院」が始まりです。
大伝法院は、真言宗智山派や真言宗豊山派などの「新義真言宗」系の真言宗分派において中興の祖とされる興教大師覚鑁(かくばん)が建立した、学問所です。その後、興教大師は高野山金剛峰寺の座主となりますが、もともとは東寺の支配下にあった高野山において、興教大師は初めての東寺出身ではない座主であったため真言宗内で対立が起こり、結果として、興教大師は高野山金剛峰寺の座主を降りて根来山に拠点を移します。
その後、大伝法院も頼瑜(らいゆ)僧正によって高野山から根来山に移り、ますます栄えましたが、その根来における大伝法院の塔頭に「智積院」がありました。
智積院は室町時代の中頃、長盛法印によって創建された塔頭で、大伝法院の中で「学頭寺院(学問における最高指導者)」の地位にありました。
後に根来山は豊臣秀吉に攻められ、一山ことごとく灰となりましたが、智積院の住職であった玄宥(げんゆう)僧正は、京都に難を逃れました。玄宥僧正は、1601年(慶長6年)に徳川家康より豊国神社の一部を与えられ、智積院を再興しました。
次いで、大阪城落城の後に、秀吉の早逝した息子(鶴丸)の菩提寺であった祥雲禅寺が寄進され、智積院の寺域はさらに大きくなりました。
以後、根来時代の伝統に立ち返り、学問の寺として他宗派にも開放され、多数の学僧を輩出したとされています。
その後、明治時代に勧学院や金堂が焼けるなどの不幸はありましたが、真言宗智山派約3000ヶ寺の総本山となって発展し、智積院会館や新金堂を戦後に建立して現在に至っています。
智積院の庭園は、国の名勝に指定されています。
その名勝庭園を中心に智積院を紹介します。
智積院会館を右手にみながら、まずは簡素な門をくぐります。
右側から「真言宗智山派」「総本山智積院」と書かれています。
金堂です。
1975年(昭和50年)再建で、本尊大日如来像が納められています。
智積院の中心となるお堂です。
明王殿(不動堂)です。
1947年(昭和22年)に火災で本堂(現在の講堂)が焼けたために、当時は四条寺町にあった大雲院(現在は祇園・円山公園南側に移転)から譲り受けたものです。
その後、現在の講堂が再建されることとなったため、現在地に移築(1990年(平成2年))されたものです。
こちらの本尊が不動明王となっているため、不動堂ともいいます。
講堂に向かう門です。
青銅屋根付きの門は、とても気品が感じられます。おそらくは江戸初期、講堂再建時のものと思われます。
その奥の講堂は、かつてこの場所に建っていた祥雲禅寺の法堂がもとになっていましたが、それは江戸初期に焼け、その後東福門院の旧殿などが移築されましたが、それも1947年(昭和22年)に焼け、現在の建物は1995年(平成7年)建立の新しいものです。
智積院庭園の講堂側です。
書院側の池から水が引かれ、築島があります。
講堂側から、庭園の築山を望みます。
智積院庭園の原形は、秀吉建立の祥雲禅寺庭園にあって、築山、泉水庭の先駆といわれています。
書院手前側では、台形に刈られた大刈込が目立ちますが、こちらも祥雲禅寺の遺構とされています。
大刈込を大書院側から望みます。
大ぶりで、1枚の岩からできている石橋などは、桃山時代の豪放な庭造りの雰囲気があるのではないかと思います。
また、奥の木々あたりは庭の外になりますが、そういった要素も取り込んで庭を広く見せるあたりは、清水寺成就院庭園あたりとも通ずるものがあります。
庭園の正面側です。
滝石組を含む多数の石と刈込で構成された築山は、中国の盧山を象っています。
石橋あたりとはかなり趣を異にする庭だと思います。
このあたりは、智積院第七世運敞僧正による修築部分とされていますので、作庭年代は江戸時代初期(1600年代)となります。
書院裏手の枯山水です。
書院表側の名勝庭園とは、全く趣の異なる簡素な庭園です。
いつの時代のものか、詳細は全く分かりませんが、書院側の庭園の自然美と対比を成すという点では、見逃せない庭園だと思います。
枯山水は、そのまま別の建物との中庭にも続いています。
このように、建物内部にまで石組があります。
中庭とはいえ、かなり広い枯山水です。
裏側に出ると、このような庭があります。
ほとんど誰も省みることのない庭ですが、手水鉢の見事さとそこに映る木々に、ふと足を止めてしまう場所です。
智積院は桔梗を寺紋にしていますが、桔梗は境内のそこここに咲いています。
足を止めて、桔梗に見入るのもよいのではないかと思います。
智積院では、他に長谷川等伯およびその一門の障壁画(国宝、重要文化財等)が見逃せません。特に、等伯の息子久蔵の遺作「桜の図」と、それを受けて描かれた等伯の「楓の図」を対比して見ると、微妙な画風の違いがうかがえて、大変興味深いです。
真言宗智山派は、成田山新勝寺や川崎大師など、関東で比較的身近な寺を大本山に構えるという意外な一面がありますが、その総本山は意外と知られていないところがあります。
そんな智積院を訪れて、障壁画の美しさを堪能してから、是非庭園を味わっていただきたいと思います。
−智積院の概要−
寺号:五百佛山根来寺智積院
宗派:真言宗智山派
拝観料:350円
拝観時間:9:00-16:00
住所:京都市東山区東大路七条下ル東瓦町960
−智積院への行き方−
・京都市バス100、206、207、208系統で、「東山七条」下車、徒歩3分
・プリンセスラインバスで「東山七条」下車、徒歩3分
・京阪電車で七条駅から徒歩10分
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桔梗は夏前に花の盛りになり、一度全面的に刈られてしまいましたが、秋にはまた咲いていて、強い花だなあと思いました。
また、不動堂横にある小さな蓮池の花が、夏は大変綺麗でしたよ。
> 龍3さん
お褒めの言葉ありがとうございます。
情念でものを語ることが苦手な私には、目配りを細かくすることくらいしかできませんので・・・。
桔梗はちょうど終わり頃でしたが、それくらい強い花ということは、まだ今月一杯は咲いてそうですね。
蓮池に何もなかったあたりが、季節のうつろいというものなのでしょう。もうすぐ、紅葉の季節ですね。