2004年05月06日

京都の路地裏で:大徳寺大仙院

12回目は、大徳寺大仙院(だいせんいん)について書きます。

大仙院は大徳寺北派の本庵とされ、1509年(永正6年)に大徳寺76世の大聖国師古岳宗旦禅師によって創建されました。
臨済宗大徳寺派には四つの派があり、それぞれ学を競うことで大徳寺全体の興隆につなげてきたのですが(妙心寺も同様の四派四本庵体制(妙心寺龍泉菴の回をご参照願います)を採っていまして、こちらが元祖といってよいでしょう)、その四派は下記の通りです。
・一休宗純の流れを汲む真珠派
・一休宗純の兄弟子養叟から春浦宗煕を経て陽峰宗韶につながる龍泉派
・春浦宗煕から実伝宗真を経て古岳宗旦につながる北派
・実伝宗真から東渓宗牧につながる龍源派(南派)


北派からはその後、千利休の首を加茂川の河原から持ち帰ったとされる古渓和尚や沢庵和尚などが出ています。
現在の住職は尾関宗園和尚。かつてはワイドショーで人生相談をやっていた有名な方です。多国語を操り(何ヶ国語で挨拶できるか不明な程)、社会人の私を捕まえて「修行しないか」と冗談半分に仰せになる、面白い方です。

そんな「人」を輩出している大仙院の本領は、特別名勝・史蹟となっている庭園にあると思いますので、庭園を中心に紹介します。


こちらが、大仙院の方丈庭園枯山水です。
大仙院01
奥には蓬莱山、そして枯滝があり、水が手前側と向かって左側に流れていく様を表しています。

上の写真で向かって左側に流れた水は、方丈の北側で徐々に穏やかな流れとなっていきます。
大仙院02
この中海では、流れが穏やかになるとともに、石も穏やかになります。そして、水は方丈西側を通り、方丈南庭の大海へと流れて行きます。

方丈東側、最初の写真で向かって手前側への流れを撮ったものです。
大仙院03
真正面の火灯窓(かとうまど)のある廊下の下をくぐって大河となり、小亀、宝船などを配しつつ、方丈南庭の大海へと至ります。

たとえば、真ん中やや左側に小さく丸いものが見えます。これが亀を表すのですが、この亀を表す岩は、ほんの少々、頂点の一部だけが表に出ているだけで、ものすごく巨大な岩が下に眠っているのです。

この庭園は、実際に間近で見ると大変小さく見えますが、その裏にはこういった奥床しさ、大きさがあって、それがこの庭園をして枯山水の代表と言わしめる所以ではないかと思います。
そもそも、枯山水の成立には下記の要素があるといいます(大仙院のパンフレットより)。

1.禅宗の影響:作庭が禅思想の影響を受けると、庭園の形態が極めて抽象的となる。例えば、白砂を使った水の表現や立てた石で滝の音を表す。
2.水墨山水画の影響:禅思想の影響を絵画が受けると、破墨山水のような象徴的表現となる。この手法が庭園にも影響を与えたとも言える。
3.政治的経済的影響:室町時代中期は下克上で大名の権威が失墜し始める。となると、従前のような大規模な作庭(鹿苑寺、西芳寺等)は不可能となる。


1や2の要素は文化的なもので、それをある程度突き詰めると慈照寺のような庭園にまずは行き当たると思いますが、3の要素はかなり時代的な要素が大きく、以後の庭園は大規模なものはほとんどなくなってしまいます。となると、枯山水のような場所をとらない技法にたどり着かざるを得なくなってしまいます。修学院離宮などがこういった「時代背景」の例外に当たると思いますが、江戸時代以降は「規模の利」を生かした庭園は寺院では造営されなくなっており、だからこそ借景のような技法も江戸時代初期に発達したのではないかと思われます。
大仙院の庭園は、現在まで続く作庭の系譜の大きな転換点の上にあると言えると思います。

こちらが、大仙院方丈南庭になります。
大仙院04
正面に一山、さらに右に少しだけ見えている山は、白砂を山型に盛ったもので、清めの意味があります。
方丈東北の滝からの流れは、次第に穏やかとなっていきますが、これが人生を表す、とも解釈されるようです。

真正面は、日本最古の玄関です。
大仙院への拝観者は、こちらの玄関ではなく、庫裡(くり)側の入り口から入ります。

玄関を反対側(参道側)から撮ったものです。
大仙院05
質素ながらも、扉の上には見事な透かし彫りがされています。
繰り返しにはなりますが、こういった、「質素ながらも奥床しい」が大仙院の凄みなのではないかと思います。

大仙院は、方丈が日本最古に近い(最も古いのが東福寺龍吟庵で、その次くらい)ものであるにもかかわらず、気軽に拝観できます。俗っぽい部分はそれなりにあるのですが(パンフレットの裏側は某社の広告です)、それを上回るだけの価値がここにはあると思っています。

お寺の方のご案内がありますので、まずはそれを一通り聞くとして、その後もじっくり見るに値する庭園と建築、襖絵が多数あります。
京都に行ったことがある人は、大仙院には行ったことがある人はそれなりにいらっしゃるかもしれませんが、今回はこの大仙院が私の京都好きの原点の一つですので、敢えてご紹介した次第です。


−大仙院の概要−
宗派:臨済宗大徳寺派(北派)
拝観料:400円
拝観時間:9:00-17:00
住所:京都市北区紫野大徳寺町45-1
拝観のご案内はこちら

−大徳寺への行き方−
京都市バス204、205、206、101、1、12、M1、北8系統で「大徳寺前」バス停下車、徒歩3分
ラベル:京都
posted by karesansui at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 京都(洛北) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご担当様
何時もお世話になっております。
恐れ入りますが、台湾 華芸文化出版社の林と申します。
弊社の「茶雑誌」はお茶関係の雑誌ですが、次期にて枯山水を紹介させて頂きたいですので、本サイトの写真はご利用を頂けませんでしょうか。
お忙しいところに申し訳ございませんが、宜しくお願い致します。
Email:yufang@cansart.com.tw
Posted by 林郁方 at 2015年07月13日 14:35
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