2005年03月24日

京都の路地裏で:本法寺

42回目は、日蓮宗の古刹、本法寺(ほんぽうじ)を取り上げます。
本法寺は、正式には叡昌山本法寺といい、日蓮宗の本山の一つで、日蓮宗公式サイトによれば、「由緒寺院」という位置付けだそうです。

本法寺は、1436年(永享8年)に日親上人を開基として、東洞院綾小路に創建されました。
日親上人は、足利六代将軍義教に諌言して弾圧を受け、焼き鍋をかぶるという極刑を受けたことから、通称「鍋かむり」と呼ばれていますが、義教亡き後は赦され、京都で日蓮宗が盛んになる礎を築きました。
本法寺はその後、四条高倉、三条万里小路と所在を移しましたが、天文の法難(1536年(天文5年))で叡山の僧兵に焼き払われ、6年後に一条堀川で再建され、さらに豊臣秀吉の聚楽第造営にあたり、現在地に移りました。
現在の堂宇は、天明の大火で焼けたあとの1797年(寛政9年)頃に再建されたものです。

本法寺で最も見るべきは、長谷川等伯作の大涅槃図ですが、当然写真撮影などできるものではありません(ほんの少しだけ、Googleのイメージ検索でうかがい知ることが出来ますが、実際に見る迫力とは比較になりません)。
長谷川等伯は能登七尾の出身で、もともと長谷川家が日蓮宗の信者だったことから、本法寺の塔頭・教行院に寄宿していたこともあり、当時の住職・日通上人と親交があったとされています。
ちょうどこの頃、本法寺の移転があり、等伯は日通上人を援助し、その縁もあって、涅槃図が本法寺に納められることになったのです。

次に見るべきが、江戸時代の芸術家・本阿弥光悦作の「巴の庭(別名三巴の庭あるいは三つ巴の庭)」ということになろうかと思います。
本阿弥家はもともと本法寺の大檀那であって、光悦の曽祖父、清信は本法寺開基の日親上人に帰依し、光悦自身も本法寺の移転に当たって、父・光二(移転の工事担当)に尽力したと伝えられています。

以下、本法寺の庭園などについて書いてみたいと思います。


こちらは、宝物館の前庭に当たる十(つなし)の庭です。
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「つなし」とは、一つ、二つと数えたときに、「十になったらつがなくなる」から「つなし」と読むのだそうですが、十の石を設えてあるので十の庭というそうです。
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が、実際には石は9つしかなく、残りの一つは「心の中にある」そうです。

こちらが、「巴の庭」の全景になります。
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奥と手前左右の両端3ヶ所に築島があり、その島が「巴」の字に似せられていることから、「巴の庭」と呼ばれています。

この庭の写真として、この蓮池を正面に据えている写真が結構あったと思います。
この蓮池は、切石を10個組み合わせた十角形の独特な意匠でかなり印象深く、いかにも本阿弥光悦らしい趣向だと思います。
が、別に蓮池が「三つ巴」を表しているわけではないことには注意しなければいけないと思います。


こちらが「三つ巴」です。
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3つの築山が「巴」の字に擬せられて造られていることから、「三巴の庭」「三つ巴の庭」と呼ばれています。
三つの巴形の地割は3神仙島(蓬莱・方丈・瀛州)を表したもので、不老不死から転じて永遠の繁栄を願う心を示すものです。

三番目の写真の枯瀧の上には、伝統的な三尊形式の石組があります。
石橋の奥には縦縞模様の青石があって、これによって水の落ちる様を表しています。
この瀧が先程の蓮池やその隣にある半円を2個組み合わせた円形石と相まって、水の流れを大きく表しています。

これらの趣向は室町期までの庭にはなく、この趣向こそがこの庭の白眉ではないかと思います。


中庭にある蹲です。
honpoji07.jpg
こちらは光悦自身の手になるものと伝えられ、日輪の「蓮」池と同じく、蓮の弁の模様を薄彫りした見事な手水鉢が置かれています。
また、手水鉢自体の形も蓮の弁を模ったものになっています。
「三つ巴の庭」ともども、光悦の意匠が見事なものではないかと思います。


もっとも、意匠だけではなく光悦のこの庭を通して見える想い、信心も見逃してはならない要素だと思います。
3神仙島や蓮池の日輪などは光悦の信心の表れが意匠になって表れた、ということもできそうです。

実は、長谷川等伯の涅槃図の裏書には、日蓮上人以下、当時の日通上人に至るまでの先師の名が書き連ねてあって(菩提を弔うという意味があります)、当時、息子を亡くして数年経った等伯の、こちらもまた日蓮宗に対する信心の深さが表れていると思います。


本法寺は、隠れたる桜の名所でもあると思います。
こちらは、仁王門横の桜と柳です。
honpoji08.jpg
桜の薄紅と柳の緑のコントラストが美しいです。

桜の時期は、境内も桜に彩られます。
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観光客は全くといっていいほど少なく、じっくりと桜を堪能できると思います。
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是非、涅槃図を、そして庭園を、等伯や光悦の信心に思いを馳せつつ、存分に味わっていただきたいと思います。


−本法寺の概要−
寺号:叡昌山本法寺
宗派:日蓮宗(一致派)
拝観料:500円(庭園・宝物館)
拝観時間10:00-16:00(涅槃図公開は3/15-4/30、10/15-11/30)
住所:京都市上京区小川通寺ノ内上ル本法寺前町617

−本法寺への行き方−
京都市バス9、快速9、12、67系統で、「堀川寺ノ内」バス停下車、徒歩3分
ラベル:京都
posted by karesansui at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 京都(洛中) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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