2009年06月29日

若年寄の諸国で侘び寂び:光前寺

全国展開の九回目は、早太郎伝説や桜で知られ、また、境内全体が国指定の名勝に指定されている光前寺(こうぜんじ)を取り上げます。

光前寺は、860年(貞観2年)に本聖上人によって創建された、南信州随一の古刹です。本聖上人は慈覚大師円仁の弟子と伝えられ、以後、一貫して比叡山延暦寺の末寺として現在に至っています。

早太郎伝説とは、以下のようなものです。

昔むかし、光前寺に早太郎というたいへん強い山犬が飼われていました。

その頃、遠州(静岡県)見付村では、田畑が荒らされないようにと毎年祭りの日に白羽の矢の立てられた家の娘を、いけにえにとして神様にささげる人身御供という悲しい習わしがありました。

ある年、村を通りかかった旅の坊様は、神様がそんな悪いことをするはずがない、その正体を見とどけようと、祭りの夜に様子をうかがっていると、大きな怪物が現れ、「信州の早太郎おるまいな、早太郎には知られるな」などと言いながら娘をさらっていってしまいました。

坊様は早太郎に助けを求めようとすぐ信州へ向かい、光前寺の早太郎をさがし出すと借りて急いで見付村へと帰りました。

次の祭りの日には、早太郎が娘の身代りとなって怪物と戦い、それまで村人を苦しめていた怪物(老ヒヒ)を退治しました。

早太郎は傷つきながらも光前寺までたどりつくと、和尚さんに怪物退治を知らせるかのように一声高くほえて息をひきとってしまいました。
(光前寺webサイトより)

このような伝説(話)は、怪物との対決があったとされる磐田市近辺にもあり、そちらでは「悉平太郎」と呼ばれているそうですが、いずれにしても同じような伝説が多く残されているのは不思議なことだと思います。


では、なぜ光前寺がこの伝説の舞台の一つとなったのかですが、それは光前寺の歴史の長さにあるのでしょう。各地で伝説になるほどの寺というものは、相応に知名度がなければなりませんし、ましてや静岡県西部にまで名前が知れているとなるとなれば尚更でしょう。
そして、光前寺全体が庭園として指定され、その中にあっても古い庭園が庭園として残っている、ということもまた、光前寺の歴史の一つというべきものと思います。

そういうわけで、ここでは特に、光前寺の庭園を中心に書いていきたいと思います。


まずは「仁王門」をくぐって、境内に入っていきます。
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参道の入り口にあり、参道自体はまっすぐのびています。

しかし、まずは参道脇の「大講堂」前の庭園にも目を向けなければなりません。
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造られたのは近年(大講堂は1980年(昭和55年)建立)で、枯れた味わいというよりは雅な雰囲気を楽しむ、特に春にいい庭だと思います。
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一方、仁王門を入って参道を振り返ると、両脇には苔の生えた石垣があり、こちらは枯れた味わいを醸していて、大講堂前の庭やその回りに咲く桜とは対照的です。
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参道は、杉木立の中をまっすぐ続いています。
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鬱蒼と茂る木々がとても印象的な参道です。


そして、「三門」に至ります。
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三門をはじめ、光前寺の建物は江戸時代末期の再建のものが多いのですが、建てられた時期の関係からか、目に見えるところでの派手さがあまりないのが特徴だと思います。

同じことは「本堂」に対しても言えると思います。
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建物を極彩色で飾り立てるようなことはなく、落ち着いた佇まいを今に残しています。

三重塔」も、少々若々しい印象です。
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それでも、この南信唯一の塔は、年輪を重ねるごとに風格を増していってくれることでしょう。


光前寺の境内は、かつて末寺が多かったからか、このように参道が転じて特に使われていない状態になっているところがあります。
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しかし、それもまた庭のように見えてしまうのは、境内の持つ古刹らしい雰囲気のなせる業というものなのでしょうか。


そしてこちらが、「本坊客殿奥の庭園」です。
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池泉鑑賞式の庭で、池と刈り込みが目立ちます。しかし、そこここに石組が隠れているようで、当初の姿が気になるところです。

庭の真ん中には滝があり、目と音で訪れる人々の心を楽しませてくれます。
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本坊客殿からあまり奥行きがないように見えますが、自然の斜面を生かしたこの庭のスケールはなかなかのものです。
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こちらは「本堂前の庭園」です。
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本堂と三門の間にあります。
滝石組が特徴的で、いわゆる龍門瀑の様式だそうです。

龍門瀑は、東光寺庭園(山梨県)や天龍寺庭園などでみられる様式ですが、主に室町時代までの主題となっていることが多く、この庭園の作庭時期の古さが推察させられます。
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この庭園は、まさに光前寺の真骨頂ともいえるものでしょう。


最後に、「光苔」について触れておきたいと思います。
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光苔は古くから光前寺の境内に自生していて、今でも参道の石垣の間に見ることができます。
神秘的な光もまた、光前寺の歴史のひとつというべきものでしょう。


見る人によっていろいろな顔を持つ光前寺ですが、どのような見方も包含して一つであることが、光前寺の存在の重みというものなのでしょう。それほどまでに圧倒的なお寺は、そうそう見られるものではないと思います。


−光前寺の概要−
正式名称:宝積山光前寺
宗派:天台宗
拝観料:本坊のみ500円、その他境内自由
拝観時間:9:00-16:30(冬季は-16:00)
住所:長野県駒ヶ根市赤穂29番地

−光前寺への行き方−
JR東海飯田線駒ヶ根駅から駒ケ岳ロープウェイ線バス(伊那バス中央アルプス観光の共同運行)で、「切石公園」バス停下車、徒歩10分
・JR東海飯田線駒ヶ根駅から駒ヶ根市こまちゃん地域振興バス赤穂北循環線で、「光前寺」バス停下車、すぐ
中央高速バス・中央道高速バス新宿−伊那・飯田線、中部国際空港/名古屋−伊那・箕輪線、みすずハイウェイバスで、「中央道駒ヶ根インター」バス停下車、徒歩25分


タグ:長野
posted by karesansui at 23:22| 京都 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他の地域 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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