2008年08月23日

若年寄の諸国で侘び寂び:粉河寺/十禅律院

全国展開の五回目は、和歌山随一の古刹、粉河寺(こかわでら)およびそれに隣接する十禅律院(じゅうぜんりついん)を取り上げます。

粉河寺は、寺伝によれば、770年(宝亀元年)に大伴孔子古(おおとものくじこ)によって開創されたとされています。大伴孔子古は猟師でしたが、山中に光を発する場所を見つけ、そこに小さな庵を営んだのが粉河寺の始まりとされています(粉河寺創建の伝承は、「粉河寺縁起絵巻(国宝)」に遺されています)。

その後、平安時代には既に栄えており、鎌倉時代には七堂伽藍が完備されましたが、豊臣秀吉の紀州侵攻の際の兵火で焼け、江戸時代にも火災に遭い、現在の伽藍は江戸時代中期以降のものです。
現在でも「西国三十三箇所観音霊場」の第三番として、あるいは粉河観音宗の総本山として発展しています。


十禅律院は、もともとは粉河寺の塔頭「十禅院」だったものが、紀州徳川家第十代・徳川治宝によって、滋賀・坂本の安楽律院の末寺になったものです。


粉河寺には、国の名勝に指定された枯山水庭園があり、十禅律院には粉河寺とは趣の異なる枯山水庭園がありますので、これらを見比べながら両寺を見ていきたいと思います。


まずは、粉河寺の伽藍から。
粉河駅から続く門前町を抜けると、「大門」が見えてきます。
kokawadera01.jpg
この楼門は、和歌山県の中では高野山、根来寺に続くもので、1706年(宝永4年)の建立です。

境内はこのように、一種の寺町のような景観を見せています。
kokawadera02.jpg
これらの建物の中には、「童男堂」や「出現池」など、粉河寺創建の伝承に因んだものもあります。

中門」です。
kokawadera03.jpg
1832年(天保3年)の建立で、「風猛山(かざらぎさん)」の扁額は徳川治宝によるものです。

千手堂」です。
kokawadera04.jpg
千手堂は千手千眼観世音菩薩を祀る堂で、1760年(宝暦10年)の建立です。

そして、「本堂」です。
kokawadera05.jpg
他に例を見ない特異な様式の建物で、1720年(享保5年)の建立です。


粉河寺庭園」は本堂を借景とし、また石組が大きく巡らされているのに、特に周囲を仕切られていないという、枯山水としては大変珍しいものです。
kokawadera06.jpg
作庭時期は桃山時代と推定され、作庭者は上田宗固(茶人・豊臣秀吉の家来)とも伝えられています。

石組の大きさ、庭の大きさはともにかなり大きなもので、とても写真に収まりきるものではありません。
kokawadera07.jpg
この迫力こそが、粉河寺庭園の真骨頂とでもいうべきものでしょう。

庭は、本堂への階段を挟んでさらに奥まで続いています。
kokawadera08.jpg

また、本堂側からも、多少ながら庭の様子を見ることができます。
kokawadera09.jpg
もっとも、この庭は正しく「本堂を見るための庭」であって、本堂側から見ることにはあまり意味がないのではないかと思います。

いずれにしても、このような豪放かつ特異な庭は他に例がなく、これだけでも粉河寺を訪れる価値があるといえるものでしょう。


さて、十禅律院には「洗心庭」という徳川治宝好みの庭園があります。
kokawadera11.jpg
石組は江戸後期の庭園らしくおとなしいもので、植栽が主体になっているのが、植栽は多いけれども石組が主体の粉河寺庭園とは対照的といえるでしょう。

洗心庭の特徴は、和泉山脈を借景としていることでしょう。
kokawadera12.jpg
もともとが塔頭だった場所であり、広さが限られていることもあって庭自体は本当に小さなものですが、この借景が庭のスケールを粉河寺庭園に負けないものにしています。


特徴が多い寺である粉河寺、そしてその隣に、もともとは粉河寺の出自ながら別の寺となっている十禅律院。
もしこの地を訪れることがあれば、この両寺を、そして双方の庭園を見比べるようにみていくと、さらに興味深いものがあるのではないかと思います。


−粉河寺の概要−
正式名称:風猛山粉河寺
宗派:粉河観音宗(天台宗系)
拝観時間:8:00-17:00
拝観料:内陣拝観300円、境内自由
住所:和歌山県紀の川市粉河2787


−十禅律院の概要−
宗派:天台宗(安楽律院末寺)
拝観時間:
拝観料:200円
住所:和歌山県紀の川市粉河2849


−粉河寺/十禅律院への行き方−
・JR西日本和歌山線粉河駅より徒歩15分
(十禅律院は粉河寺本堂の北東にあります)
タグ:和歌山
posted by karesansui at 22:54| 京都 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | その他の地域 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なんか
瀬田の石山寺をこじんまりとしたような境内ですね

写真から拝見すると
観光寺院のようですが、いやはや近畿地方でも知らない名刹の多いこと...

とっても参考にさせていただいています
Posted by 雪だるま at 2008年08月24日 05:49
コメントありがとうございます。
> 雪だるまさん
本堂などは、ぱっと見が石山寺に近いかもしれません。あの本堂に2階部分をつけるとそうなりそうです。
ただ、「観光寺院」とは程遠いということだけは確かなようでした(何せ、人がいません(笑))。
他にも弘川寺とか根来寺とか南宗寺とか、近畿中部、南部には行きたいけど遠くて手が出ないお寺が多いですね・・・。
Posted by karesansui at 2008年08月25日 00:41
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/105227356
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。